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生活文教常任委員会行政視察報告   

 市議会生活文教常任委員会は、香川県さぬき市(学校再編計画について)と兵庫県南あわじ市(少子化対策について)に行政視察を行いました。その視察報告が出来上がり、地方紙に投稿し本日掲載されました。
     <さぬき市志度幼稚園正門前で>
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     <南あわじ市で担当課の説明を聞く>
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生活文教常任委員会管外行政視察報告
                             生活文教常任委員会

 生活文教常任委員会は、5月21日から23日の日程で、香川県さぬき市「学校再編計画について」と兵庫県南あわじ市「少子化対策について」に行政視察を行いました。
 参加者議員は、南靖久委員長、北村道生副委員長、内山鉄芳委員、三鬼孝之委員、三鬼和昭委員、高村泰徳委員、浜中佳芳子委員、中垣克朗委員の8名で、議会事務局職員2名が随行いたしました。
 
 最初に、さぬき市役所を訪ねました。さぬき市は、平成14年に津田町、大川町、志度町、寒川町、長尾町という5つの町が合併してできた5万5千人程の新しい市です。四国霊場86番札所「志度寺」、87番札所「長尾寺」、それに、四国遍路を締めくくる結願の寺「大窪寺」のあるところです。また、江戸時代の奇才、平賀源内が生まれたところとしても知られています。
 
 あらかじめ学校再編計画にかかわる、①再編計画を作成するにあたっての経緯、②再編計画を推進する中での問題点、③再編計画の特徴、④今後の進め方と課題の4点について説明をお願いしてあったのでそれに添って説明を受けました。
 さぬき市の学校再編計画策定の背景として、市内学校の児童・生徒数に急激な変化が生じていたことや学校施設の老朽化が進み、耐震化対策や改築が急がれていることを挙げています。それは、合併直後に、ある学校の改修の必要に迫られたことと少子化の著しい進行が問題となり、学校再編問題の議論がはじまったようです。そんな中で、教育委員会は、学校再編計画素案の着手にかかり、平成18年8月にその素案をもとに、学識経験者、保護者、学校関係者、学校評議員、地域代表、一般公募者等で構成する「さぬき市学校再編計画検討委員会」を設置し、内容の検討を依頼し、本年3月にその協議結果報告書の提出を受け「さぬき市学校再編計画(案)」の策定を行っていました。そして、6月には「さぬき市学校再編実施計画」の公表を予定しているそうです。
 計画策定に当たっての基本的な考え方を次のように示しています。
①学校規模の適正化は、児童等にとって望ましい学習集団を形成し,より良い学習環境を創造するものであること。
②地域の中での学校の役割や通学距離、通学路の安全確保に十分配慮したものとし、保護者、地域住民の理解と協力を得られる計画内容であること。
③施設整備に当たっては、防災上の安全性に配慮し、国際化、情報化などこれからの時代に対応した新しい教育に対応できるものとすること。
④計画の対象は、公立小・中学校及び幼稚園とすること。
 この再編計画を議論するに当たって、学校再編対策室として一番力を注いだのは、如何に市民の皆さんにこの計画を理解していただけるかということであり、住民説明会をはじめ、再編計画地区協議会、再編計画地区連絡協議会等多様な協議の場を設定し、合計で54回もの説明会を持ったそうです。これまでであったら、各種の計画案作成にあたっては、事務局が素案を作り、学識経験者などの参加を要請し専門部会を立ち上げて改革案を作る。議会で承認していただき、住民に説明して終わるというのが通例のようでした。
 しかし、今回の計画作りでは、PTAをはじめとする地域住民や議会等との十分なコンセンサスを目指して再編計画の実現を進めていくことが重要で、そのことが学校再編対策室の半分以上の仕事を占めていると強調していました。説明を求められたら、いつでも、どこにでも、出かけて行く。このような基本的な態度で住民に対応しているという話は示唆に富んだものとして受け止めました。
 学校再編計画を議論するときに避けて通れない問題として統廃合問題と施設の耐震化の問題があります。現在、さぬき市での学校の耐震化率は、幼、小、中合わせて53.8%で、国の耐震推進法の80%にまで期間中には実現したいと考えているそうですが、すべて改築・統合ということではなくて耐震補強が出来るところと新築校舎で統合するという2段階方式で対応するということを基本にしているということでした。
 再編計画によって教育条件がどうなるのかということも再編計画の課題になります。最近、特区をとって小・中一貫校とか自由校区制をとるところも出てきており、市民の中にもそんな声も出てきているが、その考えは持っていない。さぬき市の教育方針は、特別な教育よりももっと大事な基礎学力をつけることに重点をおこうとするものであり、義務教育の間は義務教育でつけねばならない知識と体験と学習習慣を身につけさせることを基本的にすえていました。したがって、教育指導環境については、市独自の手厚い施策を行っていました。統合も大事だが教育の中味の問題のほうがもっと大事であるという考えです。
 市費での複式解消のための加配教員配置、大規模校1・2年生35人以上学級の複数担任制、高学年の主要教科少人数教室加配教員の配置等にそれをみることができました。
 適正規模という基準は1学級25人以上、学校規模では小学校では学年2~3学級、中学校では学年3~6学級ぐらいという考えでいるとのことでした。
 
 現地視察として再編計画に先行して3園を統合して19年4月に新築開園した幼稚園も見学しました。土地、建物で事業費10億円を投じて新築され、小学校体育館並みの遊戯室と運動場をもった広々とした素晴らしい幼稚園でした。園児も195名と多く、2歳までは保育園で、3歳からは幼稚園でという親が多いそうで、そんな親の教育要求が、こんなすばらしい幼稚園舎を作らせたのでしょう。
 
 今後の進め方として説明していたのは、施設環境の改善の課題です。17年に新築した学校などでは、全館冷暖房付き、トイレはすべて洋式になってきています。少し贅沢すぎるという意見もありますが、家庭での生活様式に合わせることも考えていかなければならなくなってきていると現実的な考えを示していました。一方で、少人数学級では友達同士うまくいけばいいのですが、うまくいかなかった場合の弊害もあります。そういう教育問題との両面をみながら学校再編問題は考えていかなければならないのだと話してくれました。
 学校再編は、どこに、どのような建物をということだけではなくて、どのような教育が作り出されるのかを含めて議論を進めること、そして、何よりも地域住民が十分納得して子どもの教育を託せる状況をつくりだすことであることを確認できた視察となりました。




 次に、兵庫県南あわじ市役所を訪ねました。淡路島の南端鳴門海峡に面し、大鳴門橋に接した市で、平成17年、緑町、西淡町、三原町、南淡町の4町が合併してできた新しい市です。人口は5万4千人程です。

 南あわじ市も他市と同様に急激な人口減少に歯止めがきかなくなっており、少子化対策が緊急の課題となっていました。人口推移は、平成12年から19年まで毎年500人位ずつ減少しており、区分別人口構成を見ると、年少人口は13.0%で、これからもますます落ち込んでいく傾向にあります。そこで市長の選挙公約でもあった少子高齢化に対応した施策を総合的に展開していくための少子対策本部を19年1月に設置をし、続いて4月には結婚促進、子育て支援、定住促進、男女共同参画推進などを中心に幅広く事業を展開していくために少子対策課を設置しています。そして、今後5年後にも合併時の出生率確保を目標とする内容で「頑張る地方応援プログラム」を策定しています。同時に、市民にも少子化対策の重要性を認識していただく手立てとして、「子育て応援シンボルキャラクター」と「愛称」を全国募集したり、子育て支援事業をわかりやすいような情報提供をしていこうということで、ホームページや窓口等での案内をはじめ、「子育てハンドブック」を作成して市民に配布するなどに取り組んでいました。
 また、子育て支援事業がすべてわかる一覧表も作成して全家庭に配布し、それらの事業が利用しやすいような手立ても行っていました。「子育て支援事業一覧表」には、「結婚」、「妊娠」、「出産」、「0歳から3歳」、「3歳から5歳」、「小学生」、「中学生」と区分された欄に事業内容が全部示され、一目で利用できる事業がわかるように工夫されています。
 南あわじ市の少子対策主要事業の総事業費は約7億円だそうです。わが尾鷲市の子育て支援関係の予算を考えるとうらやましき限りです。
 20年度の少子対策事業としては、①子育て支援事業(15事業)、②結婚促進事業(1事業)、③定住促進事業(2事業)、④男女共同参画事業(1事業)と大きく4つの分野での事業展開になっています。
 ◆子育て支援事業(事業費6億8千万円)、
①保育料第2子以降無料化事業、(幼稚園を含む)
②在宅子育て支援事業(在宅保育保護者へ月額5千円助成)、
③出産祝金給付事業(1子・2子3万円、3子以降10万円) 
④入学祝金給付事業(小・中学校入学時1万円の商品券給付)
⑤子育て応援優待券カード事業(協賛商店優待カードの発行)
⑥赤ちゃんお出かけ応援事業
⑦妊婦健康診査費助成事業(2回以上の健診に対して2万5千円助成)
⑧特定不妊治療費助成事業(1回あたり10万円、2回まで助成)
⑨乳幼児等医療費助成事業
⑩学童保育事業
⑪放課後子ども教室事業
⑫児童館運営事業
⑬子育て学習センター事業
⑭わんぱく塾事業(37講座開設)
⑮児童手当事業
 15事業にわたる子育て支援事業のきめ細かな施策が行われているのには感心いたしました。
 ◆結婚促進事業(事業費70万円)
縁結び事業ですが、若い人の晩婚化が進んでおり、南あわじ市でも40歳代の男性、30歳代の女性の独身率が高くなってきている。そこで市長をトップにして官民一体で結婚を推進していくために、商工会、民間企業、各種団体等により「南あわじ市縁結び事業推進協議会」を発足させた。会員登録制(ハッピーマジックの会)をとり、毎月1回ずつ会員の意見を聴きながら交流の場を提供している。現在登録会員は140名ほどになり、協力企業(おたすけ企業)も40社ほどになっている。近々カップル一号が誕生しそうだという嬉しい情報も入ってきていると笑顔で話していました。これからも多様な交流の場を提供していこうと考えているということです。
 ◆定住促進事業
①新婚世帯家賃補助事業(事業費700万円)
若者の市内定住を目的に、家賃5万円以上の市内民間賃貸住宅に居住する新婚世帯に対して月額1万円(最長3年)を助成する事業です。昨年実績では41組に助成をしており、年間の結婚数120組に対して30%ぐらいになっているそうです。
②通勤・通学者交通費助成事業(事業費1千300万円)
市内居住地より高速バスで通勤・通学を奨励するための交通費の助成で、助成率は、通勤者20%、島外通学者30%、島内通学者20%を助成している。昨年実績では、通学で179名、通勤で187名の助成になっているそうです。
 ◆男女共同参画推進事業(事業費20万円)
南あわじ市男女共同参画計画「南あわじ市 スマイル スマイル プラン」に基づき、市民フォーラム等で市民の男女共同参画意識の向上を図るための事業です。
 少子対策課が設置されて1年、事業的にはまだ軌道に乗っているとは言えないが、いろいろな面で少しずつ効果が表われてきているような感じで、18年度まで減少を続けていた出生数が19年度には前年比で5名の増加があったり、市外から転入してきて新婚世帯家賃補助事業を利用した新婚家庭が5組もでてきたことにも確信を強くしていました。そして、これからも職員と市民が一体となって少子化問題を打破していきたいと熱く話してくれました。

 さぬき市、南あわじ市両市から大きな示唆をあてえていただいた有意義な視察になりました。もう一点は両市とも広域行政を組んでいた地域の合併で誕生した新市でしたが、特に闇雲に特例債でハコモノを造るのではなく「教育」「少子化」という新市長の施策ビジョンに根ざした「新市のまちづくり」のなかで特例債が活用されている好ましい事例を見せていただいたような気がしました。
 今回は財政的な視察ではなかったので詳しくは伺えませんでしたが、特例債のせいだと思いますが両市とも実質公債費比率が20%前後で地方交付税との関係が気になりました。しかしながら予算に占める地方交付税の比率が特例債の分が算入されているようで羨ましいほどかなり高いのが特徴でした。
 その他にも、議員政治倫理条例や防災なども若干伺うことができましたので、本題と合わせ今後の議会活動に生かしたいと考えております。
                                  (文責 北村)

by syunsukem1m | 2008-05-29 22:24 | 市政だより

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